彫刻の森美術館について
富士箱根伊豆国立公園に位置する箱根。彫刻の森美術館はその自然を生かして、フジサンケイグループにより1969年に開館しました。当館の創設者であり初代館長の鹿内信隆は、「彫刻のための美術館は日本では前例がないため、彫刻の発展に寄与する」ことを目的としました。
折しも、彫刻の野外進出という動向が国内外で広まり始めていた時期です。量塊性を軸にした伝統的な彫刻に替わり、多様な素材を用いて作られる開放性のある彫刻が出現します。それらはスケールの巨大化とともに、彫刻の空間性を拡大させ、「環境彫刻」という呼称も登場しました。
野外の特定の空間を彫刻の展示場所とすることは、時代の流れに沿っていたとも言えるでしょう。箱根のこの地は、丘や小川、池があり、両側の山を借景とし、地平線の彼方に海が遠望できる景観を備えています。日本庭園に必要な幾つかの条件が初めから揃っていました。
美術館と敷地の設計は彫刻家の井上武吉に依頼されました。井上は親と子どものための場所を作りたいと考えていました。また、大地自体が彫刻なのだという発想を持っていました。人間の肉体の上を歩いているような肉感的な要素のある丘があり、彫刻と自然が溶け込み、知的な刺激が心に残るような場を彼らに贈りたかったのです。こうして、自然の中で人々と芸術が交流する場が誕生しました。
当財団における作品収集は近・現代の彫刻を中心にする一方、主に1970年代以降の絵画も集め、現在の所蔵数は2,000点あまりになっています。コレクションの拡充のひとつは、国際的な彫刻コンクールの開催を通して行われました。これまでに計21回開催しています。また、美術館の学芸員が独自に選ぶ方法もあり、主に、近代から開館した1969年までの彫刻史を辿るような作品を収集してきました。
作品の多くは、耐久性のある恒久的な種類の彫刻に限定されています。野外彫刻が成立するには、風雪と時の流れに耐え、長く存在することにあると考えるからです。従って、作品が影響を持ち、人々に知られるようになるには長い時間を要します。また、館内にあるそれぞれの彫刻は、空間との兼ね合いを図って展示されています。背景の自然は四季折々に変化し、見る人を楽しませてくれます。
作品は芸術家の言葉です。芸術家は自らの時代を生き、時代に訴え、時には時代を超えた真実を未来へ向けて語ろうとしています。その言葉に耳を傾け、対話してみてください。世界への理解が深まることと思います。それでは、20世紀彫刻と自然との共演をお楽しみください。