2025.10.11SAT〜 新作公開(本館ギャラリー展示室4)

アート作品としては初、野口哲哉の新作映像作品を発表。

制作イメージ

制作協力 P.I.C.S.

「野口哲哉 鎧を着て見る夢 –ARMOURED DREAMER–」展に作家の新作映像作品が10月11日(土)より加わります。一貫してアナログな手法で制作を続ける野口哲哉。制作に通底する「リアルとは何か」「リアリティーは何を根拠に発生するのか」という問い掛けにデジタル技術を取り入れ、見る者の意識や感情を揺さぶる本質を追求しています。

原形↓デジタルへ置換

精緻なモデリング↓スキャニングを無数に繰り返す

動きの研究

モーションキャプチャー、特殊デジタル加工など試行錯誤

シーンの検証

ラフ、絵コンテでエフェクトとの連関を深めていく

プロローグ

始まりは美術館側から作家への突拍子もない相談でした。
「鎧と人間、野口さんのアートが動いているのを展示できないか、デジタルの取り組みをしたい」

常に繁忙を極める野口さんは、並行する幾つもの作品制作に合わせ、この難題をはたして受けていいものか、即答することなく熟考してくださいました。

数日後、了解の返答と、コンセプト。

「デジタルが横溢する現代、あえてデジタルからアナログを逆にリスペクトしてみたい。」

技術革新のセオリーのように、鮮明さ、解像度の高度化を志向していくのではなく、不鮮明だが心を揺さぶる映像のかたちを追求する。
まるで映像技術の原始のような、世界大戦の記録映像、高度成長期初期の白黒ブラウン管テレビに映る大衆興味の的のような。

不鮮明であることが鮮明であることを超越して、人間の心を揺さぶることがある。 この視点に、野口さんがデジタルアートの解を見つけられたことを告げられた時、作家のエスプリというには深淵すぎる、野口作品の真髄をまさに痛感したのでした。

(担当学芸員)